初音ミク論(1) 「初音ミクの拓いた新時代――複数的固有性の誕生
まずは、初音ミクを体験していただこう。これに萌えたら、以下の論考は理解しやすい(ほんとか?)。
- 従来の消費文化=「属性(相対的差異=たとえば人工の『萌え要素』)の消費」(東浩紀の「データベース消費」)
- このとき、「A(消費対象=萌え要素の集積体)はおれの嫁」と言われる。
- →Aは可能世界の住人。
- →Aは世界のどこかに「一人だけ」存在する。だから「おれの嫁」と主張して奪い合うことができる。
(参考資料)まとめ動画
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「属性(相対的差異)の消費」(属性萌え)から「複数的固有性(絶対的差異)の消費」(固有性萌え)(この「複数的」というのが、新しいと同時に不気味である)へ。
この新消費文化(固有性萌え文化)は、いかなる社会的現実(コミュニケーション)を生成していくのだろうか?
複数的固有性(複数性を帯びた固有性)の誕生。
新しい言語世界。
新しい現実世界。
*1:初音ミクが、以前のボーカロイド(MEIKOなど)とは異なり、初めて「姓」を持ったことも、重要だろう。つまり、少なくとも日本人にとって、より現実的に、「固有名」を持った存在(固有的存在)になったのである。
*2:たとえば、かつての「たまごっち」や「AIBO」などは、固有性が低かった。商品名が固有名らしくないし、また、「声紋」のような固有的な機能は備えていなかったからである。また、ギャルゲーに登場する少女たちは、いまだ、従来のマンガ・アニメの登場人物たちと同様に、「世界のどこかに一人いる存在」(各人のPCの中に実在しているわけではない。よってTVアニメ化が可能)だったが、「アイマス」に登場する少女たちは、ギャルゲー(世界に一人)とミク(各PCに内在)との中間に位置づけられる、過渡的存在(もはやTVアニメ化不可能)であったと言えよう。そして、ミクは、製作者側が「未来のアイドル」として「世界のどこかに一人いる存在」としてキャラ設定したにもかかわらず、実際の消費者たちは、その設定を凌駕して、「自分のPCに宿った固有の存在」「自分と一対一の固有の関係をもつ存在」としてミクを消費しはじめたのだ。たとえば、ニコニコ動画で人気なミク動画は、ミクを「PCに宿った固有の存在」として扱っている(オリジナルソング「みっくみくにしてあげる」「タイムリミット」など)。