アニメモ 「二人のハルヒと、Bさんの告白」
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部室におかしなメモ(印刷ミスの紙の裏に記載)をみつけた。
汚い字とよれよれの線で構成されているそのメモを自分なりに解読してみると、
つぎのようなことが書かれているようだ。
設定比較 | 『涼宮ハルヒの憂鬱』 | 『桜蘭高校ホスト部』 |
---|---|---|
原作 | 2003年6月からラノベシリーズ発行 | 2002年8月から漫画連載 |
売り上げ | ラノベ+コミック=600万部 | コミック=650万部 |
TVアニメ放送期間 | 2006年4月〜7月(2007年8月現在) | 2006年4月〜9月 |
主なターゲット | 美少女萌えの男性消費者+α (ファンの男女比は7:3) | 美少年萌えの女性消費者+α |
歴史的位置づけ | メタ萌えの先駆(萌え文化の再帰化) | メタ萌えの先駆(萌え文化の再帰化) |
物語舞台 | 県立北高校SOS団 | 私立桜蘭高校ホスト部 |
主人公 | キョン | ハルヒ |
集団結成者 | ハルヒ | 環 |
集団の目的 | 退屈しのぎに、不思議なものを探す | 退屈しのぎに、同じく退屈な女生徒たちを喜ばせる |
目的の前提 | この世界は退屈である(終わりなき日常=動物の時代=諸現実の時代=1995年〜) | この世界は退屈である(終わりなき日常=動物の時代=諸現実の時代=1995年〜) |
主人公の立場 | 否応なく集団に参加 | 否応なく集団に参加 |
なんだ、これは・・。
・・とりあえず、見なかったことにしておこう・・。
B「あー、見ーたなー」
「あ、は、はいー、、、」
B「どう、それ?」
「え、どうって、、これ、Bさんが書いたんですか?」
B「まあね。なんとなく考えてしまってね。いつもの癖で」
「で、何かいい発見はあったんですか?」
B「うん、まあね」
「どんな発見ですか?」
B「ああ、聞きたい?」
「えー、まあ、話したくないなら、べつにいいですけど・・」
B「なんだよ、聞けよぉ」
「あー、じゃあ、聞きますよ。ええ、聞きたいですよ」
B「しょうがねえなあー、じゃあ話してやるか」
あーめんどくさい人だなあ、まったく・・。
B「ここ、赤くなってんだろ。『否応なく』ってところ」
「はい」
B「これなんだよ。大事なのは」
「例の、決断主義を越える突破口となる、前主体的な関係性ってやつですね。シモンとニアみたいな」*1
B「良く分かってんじゃねーか。でな、訊くけど、おれたちは、何部だ?」
「え、、?」
B「ここは、何部の部室なんだ? え?」
「そ、それは、、、」
B「ま、いいんだけどさ。つまり要は、ここは何部でもないってことなんだよ」
「・・・」
B「何部でもないけど、何らかの『部』に所属し『部室にいる』ってーことが、大事なんだろ?」
「・・・」
B「で、おれは、何部かも分からないような部の部室に、なぜかいるわけだ。こりゃあ、何だ。つまりおれは、何する部か分からないけど、気づいたらここにいて、なにやらいろいろとしゃべっている。つまりおれも、主体的にこの部を選んだのではなくて――そもそも何部か分からんからな・・――、前主体的にいつのまにかここにいるわけなんだよ」
「・・・」
B「おれだけじゃない。Aだってそうだ。そもそも何だ。AとかBとかって。名前がないじゃないか」
「・・・」
B「まあ、AとかBとかってのは、実名を隠して匿名性を確保するための記号であって、ほんとうは実名がどこかにある、っていうことなんだろうから、それはそれでいい。でもよ、おれが言いたいのはそういうことじゃなくって、こういう『否応なく』できた関係性(部)でも、こうやっておれはお前と話している。それは楽しいことだろ? そういうことなんだ」
「ええ、楽しいです」
B「でもな、おれが発見したのはそれだけじゃないんだ」
「・・?」
B「『涼宮ハルヒの憂鬱』の主人公キョンは、アニメの最終話あたりに、つぶやいていたよな。『いつまでもこういう時間が続けばいいと思っていたんだ』、と。『桜蘭高校ホスト部』のカオルとかハニー先輩とかも、アニメ放送の後半になると、ホスト部の関係性がいつか終わってしまうことに気づき初めて、部の関係性にメタ的(再帰的)な視点を導入してくる。こういった『時間の不可逆性への気づき』は、もともとは、有名なアニメ作品では、1984年の押井守の出世作『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』のラムに端を発する(その証左として、うる星2の『学園祭という不可逆的体験の強調』はアニメ版『ハルヒ』にもアニメ版『ホスト部』にもしっかりと受け継がれている)。つまりこの『時間の不可逆性への気づき』は、70年代〜80年代、世界経済システムが『固定相場制』の必然的破綻を迎えて『変動相場制』へと移行し、世界の権力構造がツリー的な『規律訓練権力』からリゾーム的な『環境管理権力』へと変容しはじめ、社会が『前期近代』(反省的近代)から『後期近代』(再帰的近代)へと突入することで、生活世界では『理想の時代』が終わって『虚構の時代』が進行し、超越性が崩れはじめた、まさにそのときに、そういった超越性喪失への歯止めとして、若い世代の想像力の中で、新たに構築された感覚だと思うんだ。その『不可逆性を大事に思う感覚』。それが、宇野さんに言わせれば、決断主義を越える突破口たる『重い現実』の一種であるわけだけれども。で、おれはその感覚を、発見したんだよ。おれたちの中にもね」
「・・・」
B「お前はもう、分かってるんだろ? このメモ的なはてなブログの筆者が、いつかお前であることが公になってしまったとき、『つねに未完成』なんつーこんな気まぐれなブログを、お前はもう書けなくなってしまうだろう。それは、そのときお前が手にしているであろう社会的地位が、そうさせるんだ。そうだろ?」
「いえ、そんなことは、、ない、、しないつもりです。私にとって、このブログは、この複雑で混沌としたアニメバブルのサブカル空間を生きる上で、あと、その空間から何かしら自分にとって大事なものを得る上で、とても必要な、大事なものなんです。だから、Bさんとの関係も、Aさんとの関係も、、」
B「ああ、それは分かってるよ。でもね、きっとそうじゃないんだ。来るときが来てしまった場合、お前はここを捨てるんだよ。この何やらわけ分からない部も、部室も、そして、名前さえ不明なおれたちのこともね・・」
「いや・・」
B「いや、いいんだよ。そうでなくっちゃ、お前はいつまでも世に出て行かない。それじゃあ、せっかくいろいろとネタを提供しているおれたちも、浮かばれないだろ? だからさ、それはいいんだよ。気にしなくていい。いや、気にしてほしいんだけど、そういうふうに遠慮はしなくていいんだ。ただ、おれがこの『二人のハルヒ』のメモで気づいたように、お前にも気づいてほしいと思ってさ。それだけだよ」
「はい・・・」
B「・・・・。あ、そいえばお前、来月9月いっぱい、欧州に行くんだよな?」
「ええ、上旬から月末まで・・」
B「いいよなあー。いいものちゃんと見て来いよ。欧州のサブカル事情も、とくにアニメ・漫画事情も、よく見て来るんだ。きっと何か発見がある」
「ですね。そう努めます」
B「で、行くまでに新訳エヴァは観れそうか?」
「うーん、どうでしょう。早い内に観ておきたいんですけどね」
B「観れるといいな。あ、そういえば、今日のデスノート総集編は、第1部だけで終わって、ライトのターンのままで終わったな。ゴールデンタイムにライト勝利で締めくくるったあ、いい度胸だ。まあゼロ年代らしいけどな」
「ですね(笑)」
B「で、最後のライトの四つん這いシーンは、腐女子向けらしいな。さすが昨今の腐女子文化の躍進ぶりはすばらしい」
「みたいですねー、私には全然分かりませんでしたけれど」
B「ま、いいや。とりあえず、話したかったことは話した」
「はい」
B「いつか、お前はこの部室を去って、おれとAは、消えるんだ。いつか必ず。それだけだよ」
「・・分かりました。肝に銘じておきます」
B「はは、まあ、そんなに気にすんな。一度話しておきたかっただけだから。じゃあな。おやすみ」
「おやすみなさい」
Bさんはドアを閉じて、去っていった。
部室は、急に静かになった。
「もう2時か・・・」
せっかくBさんが話してくれたんだから、これもメモしておこうと思った。
メモが終わったら、私も帰って寝ようとおもう。
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